私は佐山悠子、25歳。

まだ独身…

彼氏は1年程居ない…

母はお見合いを口にする様になった。

彼氏を連れて実家に帰ると、父はそそくさと出かけてしまう様な人。

この物語はそんな私の父、佐山実の話。



父は広告代理店に勤める、極普通のサラリーマン。

特に昇進もせず、平社員同然だった。


母と出会い私と弟二人の子供をもうけた。

生活は楽ではなく、下の弟が中学に入ると母は働き始めた。


当初父は嫌がっていたが、母に優しくなり家事も進んでする様になった。


私達が独立しても、変わらず家事をしていた。



転職して会社が実家の近くになり、私は実家からの通勤になった。

ある日早く帰った私は、夕飯の支度をしていた。


すると、項垂れた顔で父が帰って来た。


疲れた顔をして帰って来る事はあったが、こんな父の顔は見た事が無かった。


夕飯を食べながら、父の話を聞く事になった。

仕事の話をあまりしない父が、会社での話を口にするのは珍しかった。


父の同僚で真鍋さんと言う人がいる。


真鍋さんは要領もよく仕事の出来る人で、部長まで昇進していた。

珍しく父と昼が一緒になり、話をしたらしい。


最近はどうだ…

まだ昇進しないのか?

父は苦笑いで

まぁな…

と答えた。


お前ももう少し上手くやれよ…

人生送りバントでいいのか?

退職してからどうすんだよ…



真鍋さんの人柄を考えると、私は父を心配しているんだなと思った。


しかし父はそこで真鍋さんに暴言を吐かれたと、落ち込んでいたのだ。


昇進した同僚から厭味を言われたと、えらく憤慨してもいた。


私は父に何の言葉も掛けられ無かった。