私は奈々子の家の前の道に立ち尽くしていた。

そこには警察の捜査の跡が残されている。そして、アスファルトに無惨に飛び散る、赤黒い血・・・


奈々子はここで死んだのだ。昨日、私と最後の言葉を交わした後、ここで、のたうち苦しみながら。


昨日、奈々子の悲鳴を聞き付けた近所の住民が通報したものの、警察がかけつけたときにはもうそこは血の海だったという。

警察が肉眼で観察したところ、どうみても他殺だったらしい。というのも、死体が故意にバラバラに切断されていたのだ。

だが、最終的に決まった事実は原因不明だった。2042年現在、警察にはロボット現場検証システムが導入され、人間による

殺人の成功率は限りなく0に近い。このシステムのおかげで、以前から比べ殺人等の犯罪が急減したのである。

しかし、現場にはなんの証拠も残されておらず、最新の超高性能ロボットですら首をかしげざるをえなかったという。


この謎だらけかつ残虐な親友の死に、私は泣き崩れるしかなかった。


(なんで・・なんで・・・なんで・・・・・・・)

「なんでよ・・・!!!!!!!!!」

もっといっぱいしゃべりたかった。もっと一緒に遊びたかった。今度東京行こうとも約束してた。それなのに・・・

もうこの世に奈々子はいない。いや、もしかすると・・・


私は周囲を見回した。だが、奈々子の魂はどこにも見えない。奈々子は本当にあの世に旅立ってしまったのだ。

私はその場に崩れ落ちた。両目から大粒の涙が落ち、アスファルトに黒い染みをつくった。


でも、本当に奈々子だけだろうか。こんな状態になったのは。私の頭のなかにわずかな疑問がうかんだ。

それを確かめるべく、私は家にいそいだ。