「雪姫は自分よりも周りの人間の方が大事なんだよ。……ムカつくことにな」

「うぅ、なんか最後余計です、城ノ内副社長」

褒められてる気が全くしないわ。
私の突っ込み?に、彼は突然私の肩を引き寄せた。顔を寄せて囁く。

「呼び方が違うよな?……雪姫」

え?

その目をまともに見返して、彼の言いたい事を察した私は。


「皇……」


するりと出た名前。
私がそう呼んで、皇が深く微笑んだのを見て、

「――どうして……っ」

舞華さんは顔色を変えた。


「舞華、わからないか。俺が、雪姫を望んだんだ」

私は当然仕事のときは変わらず城ノ内副社長、と呼んでいて、それを彼もわかっている。
なのに、あえて呼ばせたのは舞華さんにわからせるため?

“皇”が私を選んだと。


「皇、どうしてよ!」

「舞華、俺はお前の望みは叶えてやれない」


舞華さんはその言葉に絶句して顔を歪める。
何かを言いかけたものの、結局は身を翻して、その場から走り去ってしまった。

「良かったんですか、舞華さん……」

私が城ノ内副社長を見上げると、彼は私の額を長い指で弾く。

「同じことを言わせるな。俺はお前だけが欲しいと言ったはずだ」

う、どうしたのよ。
吹っ切れた皇はこんなに甘々になるものなの?