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「どーゆーこと?」

会社へと戻ってきて、会議室に閉じ込められた私。

ちなみにあのプロデューサーは私が松坂龍の知り合いとわかるやいなや、完全に態度を変えた。

「あっこちらこそ、悪かったね、なんか勘違いで」
とか何とか言って去っていったのには呆れたわ。

そして今、朔が私の向かいでニコニコと問う。
売れっ子俳優の極上スマイルをそんな安売りしなくていいです。え、笑顔が怖いよ~。
けどもう言い逃れもごまかしも効きそうにないし……。

私は腹をくくって、正直に話すことにした。


「実はですね」



ーー私は二歳から十二歳頃まで子役として芸能活動をしてたんだ。


松坂龍さんは十八年前、いわゆる戦隊もののヒーロー役でデビューして、当時五歳の私は、その妹役で出演していた。(かなり歳は離れているけど)
彼の初主演作品で一緒だったこと、そして戦隊という一年間の連続ドラマをずっと一緒に過ごしてきたこともあって、龍さんは本当の妹のように私を可愛がってくれていた。
番組が終わってその後もしばらくは共演することもあったけど、龍さんは私なんか恐れ多くて近づけないほどのスターになっていったし、結局私は中学生になる前に役者を辞めたってわけ。

それから特に付き合いもなかったから、彼に会うのは十数年振りだ。


「なるほどね、スタントチームと知り合いなわけだ。ヒーロー戦隊で共演してたのか」

以前に私がアクション監督に声をかけられたのを思い出したのか、朔がうんうん、と頷く。
そうなのよね、お世話になったのは子供の頃なのに、彼といい松坂さんといい、どうして私だとわかるのかしら。
子役の時から変わってないってこと?微妙にヘコむなあ。

松坂さんは「面影あるからだよ!雪姫ちゃん子供の時から大人びた顔してたし!」なんてフォローしてくれたけど。
それにしたって小学生の私から、今の私が分かるってどういうことなの。

「でもなんで辞めたの?」

朔が聞かれたくなかったことをピンポイントで問うてくる。


く。

こ、これを言わなきゃダメ?