君の名を呼んで

「強情と言えば、誰かさんも好き勝手言ってくれやがって」

チラリと落とされた視線。

「あははは……」

あのとんでもないテンションはどこへやら、私は冷や汗をかきながら愛想笑いをして誤魔化す。
ああもう、思い出すのも恥ずかしい。子供みたいに癇癪を起こしたような気もする。


「お前といい、真野といい、
どいつもこいつも人をポンポン怒鳴りつけやがって。
俺をなんだと思ってるんだか」

彼の苦笑いとともに落とされた言葉に私は驚いた。

……社長に怒鳴られた?
あのニコニコ仮面の社長に?
想像できない。

「……まあ、おかげで目が覚めたけどな」

目を白黒させている私に構わず、城ノ内副社長が口を開く。
酷く穏やかなその口調が、いつもの彼ではないみたいで。
でもどこか、ふっ切れたようなーー

「お前に言われた通りだよ。俺はお前を見くびってた。俺に逆らって、耳の痛いことを遠慮皆無で言うのがお前だよな」

……そ、それは褒めているの?
わかりにくい彼の言葉に、私は首を傾げていたけれど。


「俺はそういうお前に惚れたんだった」


ぽつりと加えられたセリフ。


「……え?」

私は思わず彼の顔を見上げた。


いま。
……私、城ノ内副社長に嫌われたんじゃ、ないの?


「雪姫」


城ノ内副社長の顔が近付いて、私にキスを――



「――あ、いちゃつくならご自宅でね?他の患者さん、そこが空くの待ってますから」

廊下から冴木先生の声。


……すみません。