君の名を呼んで

「……」


さよなら、と言うつもりが。

……言葉に詰まった。


どうしよう。

こんなに、目がそらせないのに。
愛おしくて、涙が止まらないのに。

本当は、

本当は……。



「雪姫」


副社長が私を見つめていて、
ああ、ついにハッキリ別れを告げられるのだと思った、瞬間。




ーー“ズキンッ!!”


「痛っ……!!」

突然こみ上げる吐き気と、異常なまでの胃の痛み。

「っ、あ……!」

一瞬で吹き出した脂汗に、目の前が真っ白になってゆく。

「おい、雪姫!?」


城ノ内副社長の声を遠くに聞きながら、私は意識を失った――。