城ノ内副社長は溜息混じりに私を見下ろして。
けれど疲れたように目元を押さえた。

「東京のド真ん中で時速90㎞出せるとは思わなかったぜ。俺が免停になったら責任取れよ」

「……どんだけ無茶な言いがかりですか」

思わず突っ込みながらも。
慌てて、来てくれたって言ってるように聞こえて、それに期待してしまう自分。
きっとただ単に、“副社長”として社員を心配してくれただけなのに。

「それよりどういうつもりだ。お前みすみすあのエロオヤジにヤラレる気だったのか」

城ノ内副社長の言葉に耐えられず、私は目を逸らす。

「相手は大物ですよ?こんなことして大丈夫なんですか?……私なら平気だったのに、これくらい」


嘘。

手も足も立っていられないくらい震えていた。
心臓は破裂しそうで、胃がキリキリした。


「だからお前は演技が下手だっての」


もう、いいから。

優しくされたら、逃げられないの。


未だに視線は合わないのに。
私を見ないくせに。

視界が揺れて、涙がにじむ。


「……何なんだよ、お前は」


呆れと怒りを含んだ彼の声に、

私はついに――


「こっちのセリフです!!」


ーーキレた。