「……皇」



お願い。

もう哀しまないで。
逃げないで。


彼が驚愕に目を見開いて、茫然と私を見下ろした。


「聞いて、下さい」


お願い。



「――まさかお前が、そう呼ぶなんてな」


――愛おしさと
祈りを込めて口にした名前の、



代償は、大きかった。




「出ていけ」