君の名を呼んで

「城ノ内にとって、皇という名前は、
アイツを否定する言葉なんだ」


社長の言葉が、その場に静かに響いた。

「……え?」

予想外の言葉に、私は思わず社長を凝視してしまう。
彼は穏やかに微笑んだ。

「城ノ内には双子の兄がいたんだよ」


『いた』?


「元々“コウ”としてモデルをやっていたのは兄の皇紀(コウキ)の方でね。海外で活躍していたから、日本では知られていないかもしれないけど、かなり有名な舞台に沢山立ったカリスマモデル」

全然知らなかった。
副社長から聞いたこともなかった。


「だけどある日突然、事故で亡くなったんだ」


ああ、だから。
いつかの城ノ内副社長の言葉を思い出す。


『そこにいて当たり前なんてことはねぇんだよ』


あれは大切な人を失ったことのある彼の、悲しみから来る言葉だったんだ。

私はあの時の彼の顔を思い出す。