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副社長に引きずられてやってきたのはテレビ局。

「営業ですか?」

私が城ノ内副社長を見上げると、彼は頷いた。

「ああ、知り合いが……」

「皇!」


コウ?


聞き慣れない呼び名と、それが城ノ内副社長のことだと気が付き、次に起こるブリザードを予測してギョッとした私の目の前で。
走り寄ってきた一人の女性が副社長に抱きついた。

「来てくれたのね、皇」

嬉しそうに言ったその女性は、凄い美人だった。
副社長も笑顔を返す。

「元気そうだな、舞華」

え……?


城ノ内副社長が、怒らない。
彼女は確かに下の名前で彼を呼んだのに。
それに、今までめったに見たことのない、優しい顔をして。

ちくん。

小さな痛みが走った。


「あの、城ノ内副社長……?」

おずおずと聞けば、彼は女性を私に紹介してくれる。

「幼なじみの美倉舞華(みくらまいか)。元は一応、舞台女優で、今度テレビ界に進出する」

「一応は余計よ!これから売りだしてもらう予定なんだから」

完璧な美貌で微笑む彼女は、きっとすぐに売れるに違いない。
頬を染めて城ノ内副社長を見上げる顔にも、私に送る探るような視線にも、確実に彼への恋心を感じて。

ちくん。