「梶原ちゃ~ん、今日からすずは休暇だろ?そのあいだ二ノ宮朔(にのみやさく)の代マネやってくれない?」

社長が私にそう言って、車の鍵を渡した。


すず、こと藤城すずは私がマネージャーをしている18歳の女優で、大学入試を控えているため、今日からしばらくオフ。
私は社内でデスクワークに勤しんでいて、確かに手が空いている。
でも。


「二ノ宮朔の代理マネージャー?私が?」

「雪姫に朔ぅ?」

城ノ内副社長が思いっきり不満そうな声を出す。


二ノ宮朔はうちで一番の稼ぎ頭。
女子高生からお母さん世代まで大人気の23歳のイケメン俳優。
でも結構てこずるって聞いてるんだけどな。

「勇気あるな社長。ウチのナンバーワンにこんな毒舌平社員をつけるなんて」

副社長こそ毒を吐きまくりだけど、はっきり言って私も同意見。
もっとベテランをつけた方が良いんじゃないの?

「二ノ宮君のマネージャーは?」

「辞めた。
正しくは朔が辞めさせた。今年で四人目」

……何があった。


社長はあっけらかんと笑って言った。

「ほら、梶原ちゃんなら城ノ内に鍛えられてるから、大丈夫大丈夫」

そんな根拠のない!!

「そんな見込まれ方は嫌です~!!」

「もう皆手いっぱい。城ノ内も、いいよね」

だんだんと不安いっぱいになる私を、また煙にまくような笑顔で社長が首を傾げた。
あのぅ、向こうで副社長が舌打ちしてますけどぉ。


「出来るよ、梶原ちゃんなら」

「……が、頑張ります」


そう言う以外に何を言えというの……。