どんな手を使ったのか、朔はちゃんと私のバッグを取ってきてくれて。
彼の車で、私は会社を出た。


「そんなことをするの、城ノ内さんだろ。
なのになんで、そんな辛そうなの」

朔が車を走らせながら助手席の私を見る。
朔の運転は初めてだ。
滑らかで優しい、朔の性格が良く出てる。

彼の問いに私は俯いた。


「城ノ内副社長にとっては、私はただのオモチャなんだって」


何もごまかすことなんてできなくて、ただ苦笑が漏れた。
朔が目を見開く。

「わかってたのに、まんまと喰われちゃった。私本当に馬鹿……」

許さなければ特別でいられたのに。
『唯一副社長を拒む女』でいられたのに。
易々と遊び相手に成り下がったんだ。

「本当に?」

朔は怪訝な顔をする。

「城ノ内さんは雪姫のコト好きだと思うけど」

私は首を横に振った。

「だってハッキリ言われたもの。一番お気に入りのオモチャって……」

「いや、多分それは……」

慰めは欲しくないから、朔の言葉を止めてただ首を振る。

「私、自惚れてたのかなぁ。
城ノ内副社長に、す、少しは認めて貰えてたと思っ……」


「雪姫」


喉を詰まらせた私を、朔が引き寄せた。