慌てて身を起こしたら、朔が入室してきたところだった。
彼一人だ。代理マネージャーはどうしたんだろう。

「打ち合わせに寄ってみたら、上でお前が体調不良って聞いて……」

言いながら近付いてきた朔は、ハッとしたように足を止めた。
その視線は――

「!」

私は慌てて首元を隠す。

「それ、城ノ内さんが……?」

半分確信したような朔の問い。
そうだよね、社内でこんなことするの、彼しか居ないもの。

けれど朔は私の表情を見て、顔を曇らせた。


気付かれてる。
軽蔑される。


私はますます涙が滲んでいくのを隠して俯いた。
そんな私の様子に、朔から意外な言葉が出た。


「荷物、取ってくる。送るから」

えぇっ!?

私はビックリして思わず顔を上げる。
彼はただ、私を心配そうに見ていた。


「い、いいよ!悪いよ、朔にそんな!!それに仕事!」

うちのナンバーワン俳優なのに!

「そんなんじゃ戻れないだろ。打ち合わせはすぐ終わるから駐車場で待ってろ」

朔の車の鍵を差し出されて、私は断る間もなく受け取ってしまう。
彼は颯爽とメディカルルームから出て行った。

ああ、よく考えたら朔とのことで謹慎中なのに、マズくない?
第一どーやって周りに変に思われずに、私の荷物を持って来られるっていうの?

「うぅ、なんか冷静になったらとんでもないことを頼んでしまったような……」


でも今は、助けてくれる彼がありがたい。
私はヨロヨロと駐車場に向かった。