君の名を呼んで

私はびっくりして、彼女を見た。

「どうしたの?」

「なっ、なんでもない!」

何でもなくないよね、てくらい真っ赤な顔。

……朔、すずに何をしたのやら。
城ノ内副社長がさんざん、朔は手が早いなんていうけど……これはもしかして、本当なのかしら。

まあ、でも朔ならいい加減な気持ちではないだろうし、城ノ内副社長よりは確実に紳士だわ。


「雪姫、すず、何してるんだ?」

後ろから柔らかな声が掛けられた。


「あ、噂をすれば」


ゴトッ!

拾ったばかりのバッグを、またすずが落っことした。

向こうから声をかけて来たのはやっぱり朔。
彼のマネージャーも一緒。
朔はドラマの衣裳なのか、スーツを着てる。

「ぎゃっ」

その姿を見たすずがヘンな音で鳴った。

すず、あなた女優だから!
忘れないでよね!

彼女は真っ赤な顔で私の後ろに隠れた。

まあわかるわ、その気持ち。
朔のスーツ姿、格好良いもん。

私も見惚れながら、挨拶をかわした。


「……雪姫、準備進んでる?」

「うん、ありがと。朔も当日は司会、宜しくね」

間近に迫った私と城ノ内副社長の結婚式の話題を出して、笑顔で話していたけど。
朔が王子スマイルで口を開いた。


「ところで、藤城すず?先輩に挨拶は?」

「ニャッ!?」


すず!
だからあなた、女優!!