君の名を呼んで

「ところで梶原ちゃん、どうしたの?」

真野社長の言葉に、ここに来た目的を思い出した。
事情を説明すると。

「俺のじゃないな。リストなら城ノ内が持っていったよ」

ええ?

私はそこにいた面々に挨拶をして、社長室を出た。

城ノ内副社長はどこだろう。
今日は社内外出たり入ったりで忙しそうだった。
携帯にメールいれてみようかな、なんて思っていた時。


「あっ、雪姫ちゃあん!」


私を呼び止めたすずは、満面の笑みで飛びつく。

「雪姫ちゃーん!化粧品のCMありがと!雪姫ちゃんが社長に言ってくれたんでしょ?」


すずが言っているのは断るはずだった仕事。
仕事いっぱいなすずに来たオファーを選定していた社長に、私は『すずならやれます』と進言したんだ。


「あの会社のCMに出た若手女優は皆必ずブレイクしてるし、すず肌綺麗だもん。女のコとしては憧れでしょ、化粧品のCM」

ハデでなくても、絶対すずのためになる仕事ですからって、真野社長にお願いしたんだ。


「雪姫ちゃん、大好き!」


ニコニコなすずが可愛くて、マネージャーとして嬉しい。
おっと。本題、本題。

「すず、私のデスクに台本置いて行かなかった?」

彼女は首を振る。
すずでもないとなると。

「じゃあ朔かなあ……」

「えぇえっ!?」


彼の名前を出した途端、すずがバッグを落とした。