君の名を呼んで

すっかり出来上がった皆と、珍しく男性陣に囲まれる皇。

「全く上手くやったよな~。実は雪姫ちゃんは皆のアイドルだったのにさ~」

「誘っても全然気付いてくれないし、あれ、城ノ内君のせいだろ」


え。
衝撃の事実。

私は城ノ内副社長の数々の女遊びを見てきて。
そのせいで口説き文句や向けられる好意に大した意味なんて無いんだろうと、深く考えることもなくどんどん鈍感になっていたのよね。
どうやらそれすら皇の作戦だったよう。
朔が前に言ったように、『免疫をつけられていた』みたい。

……ズルい。ズル過ぎる。

「まあ、長年かけて計画してましたから」

さすがに皇は苦笑い。
まさかそれが18年越しの計画だったなんて、誰が想像するもんか。
こちらを見た皇と目があって、私は慌てて顔を背ける。

……だって、顔真っ赤なんだもん。

チラリと視線を戻したら、彼はニヤリと笑ったから、多分私のドキドキなんて見抜かれてるんだろうけど。


私は火照った頬を冷やそうと、ステージの外に出た。
もう真っ暗な夜空に、いくつか輝く星が見えて。
なんとなく、そのまま空を見上げていた。


「雪姫ちゃん」


後ろから掛けられた声は、私が一番親しい子のもので。
私のショールを持ってきてくれたすずに微笑んで、手招きした。