「私は女優になりたかったんです。
でも家族に色々事情があって、諦めなくてはならなくて。でも本当は家族のためなんかじゃない、ただ、私が我儘を通すことで父に……家族に嫌われたくなくて、自分から辞めたんです」

白鳥桜里の話を思い出した。


『エアリエル専属モデルの隠し子』


白鳥の立場を思って身を引いた雪姫。
けれど彼女は、それを自分のワガママだというのか。


「自分で決めたことなのに、毎日が色褪せてつまらなくて、家族を恨みもしました。そんな自分が嫌で、必死に逃げようとして……。
やっと忘れられそうになった時、高校のクラスメイトが私の写真を雑誌に送ったんです」


俺も学生時代は散々やられた不意打ちだ。
雪姫もされてたとは。
世の中にはお節介焼きがいるもんだ。


「雑誌社からスカウトされて、連日熱心に勧誘されて、正直嬉しかった。けれど断らなきゃいけなかった」



『どうして?キミなら絶対売れるのに』

『とにかく無理なんです』

『やりたくない、ではなくて無理?キミって中途半端だね。“誰かのため”って偽善は捨てて、自分で判断すれば?』



心ない言葉。


「何も知らないくせに、なんで私がそこまで言われなきゃならないの、って。凄く嫌な気分で出版社の待合室に居たら、男性が話してるのが聞こえました」