side 皇
今まで、実家に女を連れてきた事なんてない。
というか、両親は血のつながりのあるだけの存在で、モデルを辞めて家を出てからは、いちいち俺の人生に関わらせたくも無かった。
けれど雪姫のお節介でお人好しな馬鹿正直さは、思ったより俺を浸食していたらしい。
彼女を両親に会わせたい。
俺が選んだ女だと、初めて息子として誇れる部分だと、そう思った。
けれど相変わらずの母の愚痴と、俺や父を責める言葉が始まって。
ああ、やっぱりな。
こいつらにマトモな話をしようとした俺が馬鹿だった。
などと冷めた思考で考えて。
雪姫が、この両親の態度に傷つかなきゃいいが、と思った時、
「あなたは“コウ”なのよ?芸能プロの副社長だかなんだか知らないけど、意味ないわ」
母の吐き捨てた台詞に、さすがに怒りがこみ上げて、関係ねぇだろ、と怒鳴りつけそうになった俺の耳に、
「意味無くなんて、ないです」
ハッキリとした声が響いた。
は、と隣を見れば、雪姫は真っ直ぐに俺の両親を見つめている。
「な、何……」
聞き間違いかと思ったのか、母が呟いた。
雪姫は膝の上で拳を握りしめて、口を開く。
「私は、皇にーー城ノ内副社長に救われたんです」
それは初めて聞く、雪姫の弱さ。
今まで、実家に女を連れてきた事なんてない。
というか、両親は血のつながりのあるだけの存在で、モデルを辞めて家を出てからは、いちいち俺の人生に関わらせたくも無かった。
けれど雪姫のお節介でお人好しな馬鹿正直さは、思ったより俺を浸食していたらしい。
彼女を両親に会わせたい。
俺が選んだ女だと、初めて息子として誇れる部分だと、そう思った。
けれど相変わらずの母の愚痴と、俺や父を責める言葉が始まって。
ああ、やっぱりな。
こいつらにマトモな話をしようとした俺が馬鹿だった。
などと冷めた思考で考えて。
雪姫が、この両親の態度に傷つかなきゃいいが、と思った時、
「あなたは“コウ”なのよ?芸能プロの副社長だかなんだか知らないけど、意味ないわ」
母の吐き捨てた台詞に、さすがに怒りがこみ上げて、関係ねぇだろ、と怒鳴りつけそうになった俺の耳に、
「意味無くなんて、ないです」
ハッキリとした声が響いた。
は、と隣を見れば、雪姫は真っ直ぐに俺の両親を見つめている。
「な、何……」
聞き間違いかと思ったのか、母が呟いた。
雪姫は膝の上で拳を握りしめて、口を開く。
「私は、皇にーー城ノ内副社長に救われたんです」
それは初めて聞く、雪姫の弱さ。

