「君は本当に……お人好し」

帝さんはそう呟いた。
嘲りでもなく、冷徹でもなく、ただ、淡々と。

「襲われかけても、まだ俺を信じるっていうの?」

私は帝さんの顔を見た。

「いいえ、ごめんなさい。正しくは、私が信じてるのは皇です。
あなたを信じる皇を、私は信じているだけなんです」

私の言葉に、帝さんが吹き出した。

「く、正直者だねぇ、雪姫ちゃんは。俺とは反対だな」

そうして、彼は皇を見つめた。


「お前は、もう皇紀の影じゃない。……それで、良いんだよな」


皇は頷いて、苦笑した。


「過保護なんだよ、うちの兄共は。皇紀といいお前といい、人を半人前扱いしやがって」

そして、彼は私を抱き締めた。

「こいつが居る限り、俺は大丈夫だ、帝」


皇の微笑みに、帝さんは首を振って同じように苦笑した。
両手を軽く挙げて、私を見る。


「なるほど、皇の白雪姫は最強だね」

「だろう?」


答えたのは皇で、そんな弟に兄がニヤリと言う。

「マジで欲しくなっちゃう」

「やらねぇよ、馬鹿」


皇が帝さんに近づいて、軽くお腹にパンチした。
それは、私からは兄弟の楽しげなじゃれ合いにしか見えなくて。
なんだかすごく、微笑ましかった。


「まあ出来上がり、楽しみにしててよ。最高の作品にしてやるから。じゃあな、BNPさん」


帝さんがそう言ってスタッフルームを出て行った。