ーー皇が、殴った?

私は思わず皇を見上げる。


「帝、こいつだけは駄目だ。傷つけるな」

厳しい目をして言う彼。
こんな時なのに、私はそれがちょっと嬉しくて。けれど。

ーー帝さんがく、と喉を鳴らした。


「今までお前の女に手を出しても、一度も、止めたこと無かったくせに。
そんなに雪姫ちゃんが大事なんだ。……ますます壊しがい、あるね」


どうして?
なぜそんなに、帝さんは皇を嫌うの?


殴られた頬をさすりながら、それでも笑う彼から目が離せなくて。
私は皇の背中にしがみついた。

帝さんは、私をチラリと見て、皇に視線を移す。


「エアリエルのショー、観たよ。また性懲りもなく、ランウェイに立つつもり?お前に“コウ”は無理だよ」


あ。

私はハッとした。

帝さんは、皇がまたモデルを始めると思ってる?
それが気に入らないの?

「違うんです、エアリエルは」

言いかけた私を遮る、帝さんの冷たい口調。


「お前が皇紀を殺したくせに」



ーー皇の顔が凍りついた。