君の名を呼んで

***
「聞きたいことがあるんですが」

打ち合わせから帰ってきた城ノ内副社長を捕まえて、私は詰め寄った。
他の社員に聞かれないように、会議室に彼を引っ張っていって、逃げられないように扉側に立って始めた尋問に、城ノ内副社長は何やら私から目を逸らしつつも、平然とのたまう。

「なんだよ。今日の女のことなら浮気じゃねぇからな。向こうが無理矢理、食事しながら打ち合わせしたいって……」

「……どこの女の話ですか、それ」

私の目が一気に疑惑タラタラになると、彼はしまったという顔をする。

「違う話か。じゃああの銀座の……」

「一体いくつあるんですかっ」

も、もう聞いてられない。キリが無さそう。
私は眉間を押さえながら、首を横に振った。


「帝さんのことです」

「あいつに何かされたのか」

彼の名前を出した瞬間に、変わった顔色。
急に皇が真面目な顔になり、私を振り返った。

「今日、下に来て……」

その真剣さにビックリしつつ、事情を話す。


「帝さんを警戒するのは何故ですか?本当に、彼はあなたを嫌ってるんですか?」

皇は短く息を吐いて、私を見た。


「帝が俺をどう思ってても、関係ない。ただ……」


皇の言葉が途切れた。