君の名を呼んで

さらりと言う彼に真意が掴めず、首を傾げてしまう。

「私に?」

「そう、だからご飯を」

……なんでそうなるの。


その時。



「帝?」


彼を呼ぶ声がした。
振り返ったなら、真野社長がこちらを驚いたように見ていて、帝さんに近づく。

「本当に帰って来てたんだな」

「よーぉ、真野」

知り合い?
城ノ内副社長のお兄さんなんだから、知っててもおかしくは無いだろうけど。
二人の様子はそれ以上に親しそう。

私の視線に気付いて、真野社長が帝さんを示す。

「高校の同級生なんだ」

「真野ちゃあん、冷たいっ。俺とキミとの仲でぇ」

帝さんの口説き文句は男性にまで発揮されるのか。


「悪友だね。帝繋がりで城ノ内とも知り合ったんだ」

「そうなんですか」


私にしがみついたままのすずを見て、真野社長は状況を把握したらしい。
苦笑しながら帝さんを見る。

「帝、梶原ちゃんに手を出したら弟に殺されるよ?城ノ内に刑務所にでも入られたら、うちの会社困るんだけど」


真顔でそんなことを言う社長は、さりげなく帝さんの目から私たちを遮るように間に入った。