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「帝に会ったの?」

休み開け、仕事で会った舞華さんは、私の話を聞いて驚いたように聞き返した。

「はい。似てない兄弟ですよね」


そう答えると、彼女は苦々しげに溜息をつく。

「帰ってきちゃったの……。
ずっと海外だったから忘れかけてたのに」


え?

皇の幼なじみの彼女なら、てっきりその兄とも仲良しだと思ったのに。
どうやら違うみたい。


「いい?あのセクハラ馬鹿男とは関わっちゃ駄目よ。とにかく近づかないで」

舞華さんは思いのほか真剣に私に言う。
その剣幕に、ちょっと驚いた。

「だって皇のお兄さんですよ?」

すごい言われようだ。
けれど舞華さんは、深刻な顔をして私を見た。


「帝は皇を嫌ってる。
ううん、憎んでるのかも」


「え……?」


私は思わず彼女の顔を凝視する。


なぜそんなことを言うんだろう。
私はひとりっ子だからわからないけれど、仲が良いかはともかく、普通の兄弟に見えたのに。


「帝は皇が嫌がることなら何でもするわ。気をつけなさい」

「だって、兄弟なのに?」

「そういう人なの」