マンションに着いて、二人とも無言で車のドアを開けた。
エレベーターに乗り込んだ瞬間から抱きしめられて、キスを交わす。

もどかしくて、恥ずかしくて、だけど近くに行きたくて。
何度同じようにしても、ドキドキが減らない。


皇が部屋の鍵を開けて、転がり込むように二人で入る。

「こ、う、シャワー……」

「んなもん、後だ。これ以上焦らすな」


玄関から点々と、マフラーを、コートを、バッグを落として行って。
寝室に着く頃には殆ど衣服は床の上。


「脱皮みたい」

苦笑いしながら、彼を見つめれば、皇も頷いて笑った。

「なら蝶になれよ、イモムシ雪姫」

なんて言い草だ。
でも、そんな憎まれ口も愛おしくなる私も私。


「お前が女優にならなくて良かったのかもな。これ以上、他の男に言い寄られてたまるか。蝶になるなら俺の為だけにしろ」

そんなの、心配するのは私の方なのに。
皇を取り囲む女性陣を思い出す。

「女優だったら、もうちょっと堂々と皇の隣に居られたかもしれませんよ」

けれど彼は、酷く優しい瞳で私に囁いた。


「白鷺雪姫より、梶原雪姫の方が、俺には合ってる」


ほらまた。

そうやって、私を喜ばせるから。


「好き、大好きです、皇……」


彼の背中に回した腕に、力を込めた。