君の名を呼んで

***
ベストセラー小説原作の映画撮影が終わって。
しばらく朔とすずはオフ。

蓮見君の退院が決まったと聞いて、私は病院に来ていた。


「雪姫さん!」


病室に入ると、私を見た蓮見君が慌てて駆け寄ってくる。

「うちの事務所が、とんでもない額の賠償を雪姫さんにさせたって聞いた。本当なの?」


ああ、誰かから耳に入ってしまったのかな。
彼には余計な心配をかけたくなかったんだけどな。

私はなるべく気に病ませないようにと明るく言った。

「大丈夫!蓮見君は気にしなくていいの」

「そんなわけにいかない。もともと俺にも責任があるんだし」

彼の真剣な顔にごまかせないことを知る。
嘘をついても、きっと分かってしまう。


「……確かに、そうなんだけど。でも私の父がちゃんと終わらせてくれたから」

私の言葉に、蓮見君はますます責任を感じている様子。
どんどん顔を曇らせていき、最後には重々しく口を開いた。


「俺、芹沢社長にはついて行けない。
ジェイズを辞めるーー」


「蓮見君!」