い、いつの間に背後に立ったのよ、この人は!

「何を吹っ切るって?」

副社長はニヤニヤと私を見下ろしている。
き、気付かれてる?私の気持ち。

「さっきの態度と総合判定するとだ。梶原雪姫君、ズバリ君は俺のことが好きなのではないのかな?」

……どんなキャラだ。
でも、ここで私がすることは一つ。

「誤審です!誤解です!誤報ですー!!」

――全力で、誤魔化す。


「んなわけないじゃないですか。アナタみたいな女の敵、好きになんてなったら私の人生終わります」

もうとっくに強制終了、
再起動不可だけどねー!

私のめいっぱいの否定に、副社長は苦笑を浮かべた。

「そこまで言うかよ、ひっでぇ女だなあ、梶原は」

あ。
『梶原』って、呼んだ。
そうだよね、私が呼ぶなって言ったんだもん。

だけどなんで、ちょっと
苦しいんだろ。
淋しいんだろ。

目を伏せて煙草に火を点けた彼の、そりゃあもう絵になる姿から必死で目をそらして、ふと疑問を口にする。

「そういえば、なんでここに?」

喫煙ルームなら階下にある。
副社長と屋上庭園なんて思いっ切り似合わない。

「お前、落ち込んだり、嫌なことがあるとここに来るだろ。居るだろうなと思って」

「……っ」