君の名を呼んで

何よ。
やっぱりからかわれたんだ。
遊び人の城ノ内副社長が、結婚なんてあるわけない。
プロポーズなんて単語が出てきた事さえ、ビックリなんだから。

……あるわけ、ない。
あるわけ、ないけど。


「そーですか」


何となくショックで、潤んだ瞳を見られないように後ろを向いた。
さりげないつもりだったけど、皇はちゃんと私を見ていた。


「コラ、早とちりすんな」


皇が私の髪をすくって、軽く引く。
思わず彼の方に顔を向けてしまった。

「痛っ、何……」


「お前は結婚しても、仕事続けたいんだろう?

だから専業主婦ってのは無しだな」


皇が苦笑いして。
私の髪にキスをした。


「……っ」


……もう、何なのよ。
そうやって、私を振り回して紛らわしいったら。


ズルい。