君の名を呼んで

白鳥が言わなくても検討はついていた。

「賠償金を肩代わりさせる代わりに、アイツについていくつもりか」

世界的にトップレベルのモデル兼デザイナーで、日本への新規開拓を任される程の実力者なら、三千万円くらいどうにでもなっただろう。

けれど、その交換条件は?

そういう奴がタダで動く程甘くないことくらい、俺達は熟知している。
雪姫に問えば、彼女は首を横に振る。

「ちがいますっ……!私は、桜里と一緒に行きたいんです」


このドへたくそ。
そんな、学芸会並みの演技しやがって。

俺は苛立たしげに雪姫から白鳥へ視線を移す。
睨みつけても、あの男は表情を崩さない。
まるで自分だけは正義のような、絶対的な雪姫への愛を語る。

「今の僕は雪姫のためなら、何でもしてみせますよ」

腹立たしいことに、それは。

「君に雪姫を止める権利なんてないよ」

俺の傷をえぐり出すーー。


「君は雪姫のために、何一つしてない。モデル業界からも逃げだして、雪姫に対しても中途半端なまま」

「桜里、やめて」


「君は雪姫に、何をしてあげられるんですか?」


そんなの、俺が聞きたい。


どうして分からない。
俺はお前を傷つけたいんじゃない。ーー守りたいんだ。


俺はお前に、何ができる?