君の名を呼んで

馬鹿。


「アイツを選ぶのか」


そんなバレバレの演技で。


「そうです。だから、皇」


俺を騙せるとでも思ったのか。



「私と、別れて下さい」



どこにも行くなと、そう言ったのは、お前の方なのに。



「ふざけるな……。どうしてお前はいつもそう、一人で勝手に背負い込む」

気が付けば雪姫の辞表は俺の手の中でグチャグチャになっていて。
俺の口から漏れた言葉に、雪姫はますます顔を歪めた。

泣くかと身構えた瞬間、


「あまり雪姫を虐めないで頂きたいですね」


その場に現れたのは白鳥桜里。


何だってコイツはこう、絶妙なタイミングで現れるんだ。
雪姫に 盗聴器でもしかけてるんじゃねえのか?


「コイツに何をした」


俺の問いかけに、白鳥が低く笑った。

「何も。僕は彼女の望みを叶えてあげただけですよ」