side 皇
『城ノ内、すぐに来い』
内線で俺を呼びつけた真野の声は、いつになく緊張を孕んでいて。
「なんだよ、急に」
社長室の扉を開けた瞬間に、真野は俺を見て眉をしかめた。
怒っているような、哀しむような。
真野をそんな顔にさせるなんて、何事だ。
彼はデスクの上を顎で示す。
「梶原ちゃんが持って来た」
ーーどういうことだ。
“それ”を掴んで、俺は社長室を飛び出した。
雪姫を探す。
今日は外に出る仕事なんて無かったはずだ。
……それなら。
エレベーターも待てずに、階段を駆け上がって。
息を整える間もなく、外に続くガラス戸を押し開ける。
屋上庭園に出れば、やっぱり雪姫はそこに居た。
俺を見て何を言われるのかを察したのか、その表情がこわばる。
「どういうことだ、雪姫」
抑えつけた声は意図したより低く響き、雪姫の瞳を揺らす。
俺の手には、真野から渡された白い封筒があった。
ーー雪姫の辞表。
「エアリエルのイベントを最後に、私はBNPを辞めます」
今にも泣きそうな顔をして、それでも彼女は微笑んでみせようとする。
「ーー私は、桜里とイギリスへ行きます」
『城ノ内、すぐに来い』
内線で俺を呼びつけた真野の声は、いつになく緊張を孕んでいて。
「なんだよ、急に」
社長室の扉を開けた瞬間に、真野は俺を見て眉をしかめた。
怒っているような、哀しむような。
真野をそんな顔にさせるなんて、何事だ。
彼はデスクの上を顎で示す。
「梶原ちゃんが持って来た」
ーーどういうことだ。
“それ”を掴んで、俺は社長室を飛び出した。
雪姫を探す。
今日は外に出る仕事なんて無かったはずだ。
……それなら。
エレベーターも待てずに、階段を駆け上がって。
息を整える間もなく、外に続くガラス戸を押し開ける。
屋上庭園に出れば、やっぱり雪姫はそこに居た。
俺を見て何を言われるのかを察したのか、その表情がこわばる。
「どういうことだ、雪姫」
抑えつけた声は意図したより低く響き、雪姫の瞳を揺らす。
俺の手には、真野から渡された白い封筒があった。
ーー雪姫の辞表。
「エアリエルのイベントを最後に、私はBNPを辞めます」
今にも泣きそうな顔をして、それでも彼女は微笑んでみせようとする。
「ーー私は、桜里とイギリスへ行きます」

