言われた言葉は、意味を私に伝えることなく素通りした。

「何、言ってるの?」

意味が分からない。
いきなり現れて、皇と別れろだなんてーー。


「なんで?」

「ああいう男は、君には無理だよ」

「無理だなんて、どうして」

「君が一番良く分かってるだろう」


桜里は冷静に、口を開く。
それが腹立たしい。

つい低くなる声を自覚しながら、彼を睨みつける。

「……帰ってよ」

「雪姫」

「帰って!何なの一体」


ずっと混乱し続けている私の頭。
いろんなことがあり過ぎて、何から考えれば良いのか分からない。

ああ、私今、桜里に八つ当たりしてる?
でも、彼にそんなことを言われる筋合いなんて無い。

桜里はそんな私に、ただ穏やかにーーけれど鋭く告げる。


「雪姫、迎えに来たんです」


え?


耳に入った言葉に顔をあげたなら、
桜里が私をまっすぐに見つめていた。


「一緒に、イギリスに行こう」