雪姫が今どんな気持ちでいるか、容易に想像できた。

信じろ、というには、俺は前科がありすぎる。
雪姫の前でさんざんつまみ食いしてきたんだ、信用されなくても当然。
まさに自分で巻いた種だけどな。

けれど傍に居さえすれば、二人の時間を埋めて行けば、アイツはわかってくれると思っていた。

まさかあんな伏兵に、かっさらわれるなんてーー。


雪姫の過去なんて、気にしたことは無かった。
そりゃ、アイツにだって男の一人や二人居ただろう。

いや、朔といい、蓮見といい、アイツは何気にモテる。
本人が気づいてないのが、幸いなのか不幸なのか。


あの後蓮見は姿をくらましていて、捕まえられなかったが、もしいたらアイドルだなんて思い出す暇なく、ボコボコにしていたかもしれない。


「城ノ内、くれぐれも梶原ちゃんを追いつめるなよ」

真野が心配そうに俺に言う。

「わかってる」


自分を殴れるなら、
とっくにそうしてる。


雪姫を守ってやれなかったこと。
雪姫の手を放してしまったこと。
雪姫を泣かせたままにしてしまったこと。


後悔が渦巻いて、時間を戻せたなら、なんて柄にもないことを考えるくらい。


わかってるけれど。


「何もかも、気に入らない」


今この瞬間にも雪姫が白鳥と居ると思うだけでーー
ひどく苛立った。