side 皇
「何なんだ、あの男」
深夜に近い会社に戻れば、社長の真野はまだ仕事中で、一部始終を話して聞かせた。
イライラと煙草に火を点ける俺を刺激しないようにか、真野がそっと言う。
「白鳥桜里って言った?」
腹立たしさを抱えながらも、あいつのことはどこかで見たことがあると思っていたけど。
「知ってるのか」
「オーリ。“エアリエル”の専属モデル」
“エアリエル”はイギリスのファッションブランド。
全世界でかなりの売り上げを誇る高級ブランドだ。
「エアリエルの?」
「……コウもエアリエルのショーに出てたよね」
双子の兄ーー皇紀の方だ。
「専属モデル……」
あの眼鏡スーツ姿は医者か弁護士かって風情だったのに、まさかモデルとは。
しかも世界規模のブランドの専属モデル。
相当な大物らしい。
あの優雅な立ち居振る舞いに感じた既視感を思い出した。
ああ、皇紀と同じ空気だったのかと。
“コウ”を引退してから、モデル関係にはあえて目を向けないようにしていたから、
白鳥桜里のことなんて分からなかったが。
「それがなんで雪姫と知り合いなんだよ」
「さあ。オーリのプロフィールなんて全然ネットにも出回ってないし、彼程のモデルならたぶん出身地一つ明かすにも、事務所との契約があると思うよ」
つまり、雪姫を問いつめても、何も聞き出せないかもしれないということか。
真野が手を叩いて、さも名案を思いついたように言う。
「……ほら兄妹オチとか!!」
「あいつに兄妹はいない」
皇紀の話をしたとき、雪姫は『私は一人っ子だから、兄弟とか羨ましいです』なんて言っていた気がする。
そんなことで嘘はつかないだろうし、第一あいつのド下手演技なんて、俺に見抜けない筈がない。
「……気に入らねえ」
舌打ちして言えば、真野は少しあきれたように俺を見た。
「自業自得だよ。梶原ちゃん放ってお色気社長に構ってるから」
「うるせ。それどっからのタレコミだ」
痛いところを突かれて、真野から視線を外す。
どうせコイツに言いつけたりするのは、朔かすずに決まってるが。
「何なんだ、あの男」
深夜に近い会社に戻れば、社長の真野はまだ仕事中で、一部始終を話して聞かせた。
イライラと煙草に火を点ける俺を刺激しないようにか、真野がそっと言う。
「白鳥桜里って言った?」
腹立たしさを抱えながらも、あいつのことはどこかで見たことがあると思っていたけど。
「知ってるのか」
「オーリ。“エアリエル”の専属モデル」
“エアリエル”はイギリスのファッションブランド。
全世界でかなりの売り上げを誇る高級ブランドだ。
「エアリエルの?」
「……コウもエアリエルのショーに出てたよね」
双子の兄ーー皇紀の方だ。
「専属モデル……」
あの眼鏡スーツ姿は医者か弁護士かって風情だったのに、まさかモデルとは。
しかも世界規模のブランドの専属モデル。
相当な大物らしい。
あの優雅な立ち居振る舞いに感じた既視感を思い出した。
ああ、皇紀と同じ空気だったのかと。
“コウ”を引退してから、モデル関係にはあえて目を向けないようにしていたから、
白鳥桜里のことなんて分からなかったが。
「それがなんで雪姫と知り合いなんだよ」
「さあ。オーリのプロフィールなんて全然ネットにも出回ってないし、彼程のモデルならたぶん出身地一つ明かすにも、事務所との契約があると思うよ」
つまり、雪姫を問いつめても、何も聞き出せないかもしれないということか。
真野が手を叩いて、さも名案を思いついたように言う。
「……ほら兄妹オチとか!!」
「あいつに兄妹はいない」
皇紀の話をしたとき、雪姫は『私は一人っ子だから、兄弟とか羨ましいです』なんて言っていた気がする。
そんなことで嘘はつかないだろうし、第一あいつのド下手演技なんて、俺に見抜けない筈がない。
「……気に入らねえ」
舌打ちして言えば、真野は少しあきれたように俺を見た。
「自業自得だよ。梶原ちゃん放ってお色気社長に構ってるから」
「うるせ。それどっからのタレコミだ」
痛いところを突かれて、真野から視線を外す。
どうせコイツに言いつけたりするのは、朔かすずに決まってるが。

