私と蓮見君の視線が絡んだのは、その一瞬だけ。
それを振り切るかのように、彼は私の首に噛み付いた。

嫌……!

私の瞳から、一気に涙が溢れ出した。



そしてーー



「いくらアイドルでも、暴行の現場を押さえられたら擁護しようがありませんよね」


鋭く響いた男性の声に、ピロリン、と場にそぐわない呑気な高い音。
けれどそれは携帯のムービーを撮っていたのだと気づいた。


「っ、!!」


蓮見君がたじろいだのがわかり、彼は私から身を離す。
携帯をしまい込んだ相手は、怒りをあらわにして吐き捨てた。


「失せろ、ガキ」


その声に、弾かれたように蓮見君は飛び出して行った。


「どうして、ここに……?」


私は助けてくれた相手を、信じられない思いで見つめる。



皇じゃない。


朔でもない。



けれど、私は彼を良く知っている。


差し伸べられた両腕を。

柔らかな笑顔を。



「ただいま、雪姫」



その相手は、私を抱きしめた。