「梶原雪姫です」

「レナです。
女優さんじゃないの?もったいないわね。現場であったら宜しくね」

彼女は完璧な微笑みで颯爽と去っていった。

……気さくなひとだなあ。
嫉妬した自分が恥ずかしい。

「副社長、レナさんと前からお知り合いなんですか?」

見上げれば、彼はニヤリと笑った。

「気になる?」

「は?」

……思いっきり冷たい声を上げてしまった私。

「いえ特に」

って言うしかないじゃん、この空気!


「だよなー雪姫はそうだよな」

ふ、と笑う副社長を見て、ちょっと後悔したけど。
城ノ内副社長は撮影中の朔を見て、口を開いた。

「この分だと今日は夜中までかかりそうだな。……気をつけろよ、朔は手ぇ早いからな」

え?
付け加えられた言葉にびっくりした。

「な、何言ってるんですか。城ノ内副社長じゃあるまいし。だいいち私なんて、朔にとってはタダの歩く手帳ですよ」

彼は低く笑う。

「舌の肥えた俺ですらお前を喰いたい時があるからな。あの雑食ヤローならペロッといきそうだ」

「!!?」

もはやなんてつっこんだらいいやら。
というか、衝撃的爆弾発言に、思考がついていかない。