君の名を呼んで

——『どうして、舞華さんは彼を救ってあげないの?』


あの日、梶原雪姫は、いとも簡単に私のエゴをさらけ出した。

私は皇を暗い場所に留めておくことしか考えてなかった。
そこで一緒に居ることしか。
そうすれば私は皇の特別でいられるから。
それが妹としての、特別でも。

梶原雪姫のように、彼を光の当たる場所に引きずり出すことなんて、これっぽっちも考えていなかった。

まさか彼女が、本当に皇を救い出すなんて、皇を変えるなんて。


ズルい、嫌い、憎い。
最初はそんな気持ちしかなくて。


ーー『舞華、俺はお前の望みは叶えてやれない』


そう言った皇の穏やかな瞳が、梶原雪姫に向けた笑顔が、私に突き刺さった。
私は皇を奪られたことが悲しいのか、彼だけが光の下へ出ていけたことに嫉妬しているのか。
私はまだ、暗い場所に一人居続けている。
多分、皇に皇紀を一番重ねていたのは私だった。皇もきっと気付いてた。

でもそろそろ、終わりにしなきゃ。
だってもう、皇は私を見てくれない。
皇の隣は、もう私の場所じゃない。

ううん、きっと最初から、私のものじゃなかった……。


「舞華さん!」


梶原雪姫、あんたなんか嫌い。



けれど、皇を救ってくれて


ありがとう。