君の名を呼んで

side 舞華

ずっと、闇の底に居てくれたら良かったのに。
そうしたら、私だけのものだった。


皇紀と皇とは幼稚園からご近所さんで、一人っ子だった私は、彼らと本当の兄妹のように育った。
いつの間にか私は皇を好きになっていたけれど、皇の中で私はいつまでも妹。
だからこそ、傍に居るのを許されていたのも事実だった。


皇紀を失った日。


私は皇に抱きついてずっと泣いていた。
皇は涙を見せなかった。

……私があまりにも泣くから、泣けなかったのかもしれない。


思えばあのときも、結局私は自分のことばかり。
彼のことなんて考えていなかったのね。

皇は独りきりで皇紀を想って。
彼のために悲しんで。
彼のために傷ついて。

誰も寄せ付けず、誰も受け入れなかった。


あのひとが、現れるまでは。