「それが作戦なのよ!騙されちゃあダメよ雪姫ちゃん!!」

すずが私にずいっと近づいて言う。
撮影の合間に、私はさっきのことをすずに話していたのだけど。

「そうかなあ。でもいい子そうだったけど」

「だめだめ!!そんな無防備じゃペロッと喰われちゃうよ、雪姫ちゃん!」

……18歳の女の子になんてこと言われてるのかしら、私。

「だいたい城ノ内副社長が知ったら、それこそ大変なことに」

「俺が何だって?」


ーーギクリ。


すずとふたりで硬直して。
ゆっくりと振り返れば。

間違いようも無い、長身黒づくめの美形が、煙草をくゆらせながら立っていた。
彼は私達を見てニヤリと笑う。

「なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたなあ?」

「そこは聞き逃して下さい!大人の余裕でサラーっと受け流して下さい!!」

必死でごまかそうとする私に対して、すずもまたニヤリと笑う。

「城ノ内さん、雪姫ちゃんてば蓮見貴雅に狙われてるんですよぉ。ちゃああんと捕まえとかないと、かっさらわれますからね?」


すず!この裏切り者!!


「へ~ぇ」

副社長は私ににじり寄り、その顔をぐいと近づけた。
だから、ここ、仕事場だってば!


「雪姫、お前は誰の女かもう一回しつけ直す必要があるな」

「いい、いいえ!ちゃんと自覚してます!全く不要ですとも!!」

何されるかわかったものじゃない!
蒼白になる私の隣で、すずがニヤニヤと笑う。

「もう一回、てことはすでに調教済ってことなのかしら」

すず、お願いだから自分が清純派女優だって思い出してよ!