翌日、学校で篠宮さんが他の女子生徒と喋っていた。例のライトノベルに出てきた熱血ソフトボール女だ。

「サラ、あいつのことどう呼んでんの?」
「へ?」

相変わらずかわいい「へ?」だ。全然、嫌味な感じがしない。しかし、このソフトボール女は、今、一番ナイーブなところをピンポイントで突いてきやがる・・・お前は今日から俺の心の中でゴリラと呼んでやる!!

「た・・・『たかし』・・・だよ?」

篠宮さんがちらちらとこっちを見ながら答えた。ズキューンときた。ものすごくズドキューンときた。僕はゴリラのことを誤解していた。あなたはもっと偉大な存在だった。僕の心の中であなたは今からボスゴリラだ。

「で、新田はサラのことなんて呼んでんの?」
「へ!?」

我ながらすごい声を出した。全然、趣の無い「へ」だ。心なしか篠宮さんが僕のことを熱い視線で見ている。ボスゴリラは自分で質問しておいて、全然興味がなさそうだ。

結局この日、僕は無理をしすぎて教室で鼻血を出した。でも、この日以来、篠宮さんのことをさらと呼んでいる。