『もしもし?』
 
『俺、
今さ要ん家の前まで来てるんだ。
出てこれるか?』
 
『うちの?待ってて下さい。すぐ行きます』
 
電話を切って亜子に言うと
「テレビ観てるからゆっくり
どーぞー」
 
 
 
玄関を出ると門の近くに
先輩の姿がある
 
「本当にいる」
 
「何だよ、それ。俺は幽霊かっ」
 
こうして会いに来てくれるのは
すごく嬉しい
けど…
 
「何かあったんですか?」
 
「バイトの、磯辺の事…。お前
気にしてると思って」
 
…え?それでわざわざ?
電話でも良かったのに
 
「確かにアイツはよく家族で来てたけど、オーナー通して俺は挨拶したくらいだし、バイト募集だって俺からじゃなくオーナーに聞いてたから。だから要が心配する事は何もない」
 
「…本当?」
 
「当たり前だろ」
 
 
 
「…他の女の人からも何も言われてない?」
 
こんな事言ったら重いかな…
でも聞かずにいられない
 
「たまに番号教えてくれって言われるけど、全部断ってるよ」