…待って。
あの格好と背の高さ…見覚えがある。
まさか…


「江崎課長…?」


白い吐息と共に吐き出された言葉は、私の好きな人の名前。

信じたくない一心で何度も確認したけれど間違いなかった。

女性と江崎課長は仲良さそうに歩いていく。
しかも女性は江崎課長の腕に自分の腕を絡めて。
誰がどう見ても、美男美女の仲良いカップル。


その光景にもう限界だった。
視界が滲むのを必死に抑えて、来た道を引き返す。

電車になんて乗る気分になれず、構内のトイレへ入った。

バタンッと思い切り個室のドアを閉めた途端、視界がゆらゆらと揺れてポロポロと涙がこぼれた。

必死に涙を止めようとしたが、今まで以上に涙が出てくる。



…嘘だと信じたい。
ただの見間違いだと思いたい。

しかしあの噂を聞いた後に、同じような場面に遭遇した私はもう違うとは言えなかった。

江崎課長は私に好きだと言っておきながら、あんなに綺麗な人と会っているの?