「小坂先輩!」


小坂の頭上からハイトーンな女子の声が降ってきた。

その声に小坂は左手に持っている単行本から視線をそらし上を見た。

小坂の予想通り、そのハイトーンの声の主は1学年下の2年生城崎菜都であった。



「・・・『壺の中の穴』・・・へぇ~ソレどんな内容ですか?推理モノですか?」



相変わらずハイトーンで話しかけてくる城崎菜都に、小坂は単行本に目を戻しつつ淡々と答えた。



「・・・ソレを模索してるトコ。推理というべきか・・宗教というべきか・・はたまたミステリーというべきか・・・恋愛モノというべきか・・・作者が何を言いたいのかが途中だからまだ分からない、ってカンジ。」



「ふ~ん!」



と言いつつ、城崎菜都はニコニコしながら小坂の隣へと回り込み単行本を覗き込んだ。



「うわっ、字ぃ小っちゃい!」



無邪気にはしゃぐ城崎菜都に、小坂は半分呆れ顔だった。



「ねぇ・・・ここは一応図書室なんだから・・・・」



小坂がお説教がましく始めると、城崎菜都はサッと姿勢を正しつつ言葉を遮った。