「人を動かすのは感情だよ。だから人は、沢山の人と会い、色んなモノに触れて感情を豊かにしたがるんだ。」


「そして、美しい感情に従って生きる姿を見て・・人は、自分もそうありたいと、頑張れる・・・先輩・・・・」


「なに?」


「この前・・話しの途中でしたよね。・・・菜都が、先輩に告白した時の返事・・・」



「あぁ・・・アレね・・・」



「実は、気になってたんですよね。

先輩がなんて答えたのか。」



僕は、ベンチから立ち上がって屋上の風を一身に受けた。


「アハハ・・・そうなんだ・・・。

でも・・その話はまた今度にしようよ。

まだ、城崎さんが亡くなって日も浅い・・。

今は静かに、彼女の冥福を祈ろう・・・」


先輩は高い空を見上げた。



「そうですね・・・。

ところで・・・」



「うん・・・」


小坂先輩は僕を見上げた。


「僕と菜都が付き合っていなかったら、小坂先輩は菜都の事・・本当はどう思っていたんですか?」


「どうして?」


「だって、一度は告白してきた子の首筋にあの『偽』のアザですよ・・・。

本当のところ、先輩も菜都の事、気になったりしてたんじゃないですか?」



「ハハハ・・・もう関係ナイって・・・・」





・・・ミッション成功。





持ち主をなくした分厚い本だけが、今ゆるい風に吹かれて、ページをパラパラとめくっていた。