彼女はいつも、暖かく笑っていた。
多分、本当に楽しくて楽しくて仕方なかったんだろう。
いつ見ても、何していても。
だから、不意に見せる涙は俺を十分に驚かせて。
自分の知らない何かを知っているようで、少し寂しかった。悔しいかったのかもしれない。
でも、その感情がただの逃げだと悟った時、彼女はもういなかった。










「ねえ、叔父さん。これ、なあに?すっごくかっこいいね!」
「ああ、そうだろう、そうだろう」

叔父さんは満足げに笑って頷いた。
僕はわくわくと興奮しながら、そっと硝子で出来た万年筆を手に取る。
それは、太陽の光を七色に分裂させて、紙の上に幻想的な虹を作り出す。
手に持つとずっしりと重くて、安物のボールペンとは比べものにならなかった。

「おじさんのお仕事はなあ、これを作る事なんだ。ひとつひとつ、手作りの特注品。かなくんが大きくなったら、世界でたったひとつの万年筆を作ってやるからな」
「おっきくなったらって、それって、いつのこと?」
「そうさなあ。かなくんが、本当にものの良さが分かるようになったらだな」
「それじゃ、わかんない!」
「大丈夫さ。かなくんはいい子だから、きっともう、ほんのすぐのことさ」
「ほんと!約束だからね」
「ああ、約束だ」

そして、その約束は果されないまま、叔父さんはあっけなく死んだ。