組長から頂いた軟膏が、半分程なくなった頃。

「寒い……」

あまりの寒さに浅い眠りから目を覚ましました。昨夜、火を点けた火鉢はすでに消え、炭は全て灰となっています。

かじかんで動かない手を必死に動かし、火鉢に新しい炭を入れて火を点けました。

すると、炭はすぐに鮮やかな赤色に染まり、パチパチと音を立てた。

「今日は冷えるな」

地球温暖化などが起きていないこの時代。

私がいた時代よりも、冬の寒さが厳しい気がします。

けど、今日は特に酷い寒さです。

火鉢に火を入れても、部屋が暖かくなりません。

夜着の上から厚手の羽織を羽織った後、部屋の窓を開けました。

外を見た瞬間、なぜこんなに寒いのか分かりました。

曇天の空からゆっくりと舞い降りる、無数の白い花びら。

雪が降っていました。

「通りで寒いわけだ」

しばらく、外を眺めようかと思っていた私ですが、窓から侵入してくる冷たい風に我慢できず、すぐに窓を閉じました。

冷蔵庫の中かと錯覚させるぐらい冷えた部屋で、夜着から小豆色の仕事着に着替える。

そして、小さな文机に置かれている軟膏を手に取って、少量を匙でこそぎ取ると火鉢で炙って溶かす。

それを紙の上に置いて手に塗っていく。