「……これを私に渡すために長い時間、外で待っててくれたんですか?」

「あっ、いや、別にそんなに長く待ってないよ。ここに来てすぐ君を見つけたから」

組長は慌てた様に否定しますが、軟膏を渡してくれた時の手の冷たさや鼻の頭が赤くなっている事から、長い時間外で待っててくれたことが分かります。

いつ私がここを通るか分からないのに、体の芯まで凍える様な寒さの中、私を待っていてくれた。

そう思うと申し訳ないと思う以上に嬉しかった。

「ありがとうございます。大切に使いますね」

「うん」

「お礼と言っては何ですが、部屋でお茶でも飲んでから帰ってください」

「お誘いは嬉しいけど、遠慮するよ。帰りが遅くなったら近藤さん達が心配するからね」

「そうですか」

「でも、代わりに少しだけ」

グイッと腕を引かれると、私の体は組長にすっぽりと抱きしめられました。

「くっ、組長!」

「ちょっとだけ、ちょっとだけだから。……天宮さんって温かいな。なんだか安心する」

背中に回された腕に力が込められる。

最初戸惑っていた私ですが次第に落ちついつきて、広い肩に頭を預けました。