私の師匠は沖田総司です【上】

それから数日間、私たちは徳川家茂の警護を終えました。

警護中は何も事件は起きず、ずっと暇を持て余していた程です。

明日には大阪の町を出て、屯所に帰ることになっていました。

「天宮君、どうかしましたか?」

「いえ、何でもありません」

警護場所から旅籠へと戻る道を歩いていると、山南さんが考え込む私を心配そうに見つめていました。

岩城升事件はまだ起きていません。

だから山南さんもまだ腕に怪我をしていませんでした。

このまま何も起きずに明日になって欲しい。

私は歩きながら、何度も願っていました。

しかし。

「山南さん」

「ええ」

隣を歩いていた土方さんと山南さんが足を止める。

二人の視線の先には呉服屋がありました。

まさか……。

突然、襲い掛かったいやな予感。

身体に冷水が掛けられたように、背筋がスッと冷えた。

「あの店に男が数人、入っていきましたね」

二人が腰に差した刀の柄に手を置いた瞬間、店から争うような音が聞こえた。

この瞬間、私は直感した。

岩城升事件が起きたのだと。