私の師匠は沖田総司です【上】

「こんな所で何してんだ」

「土方さん……」

いつの間にか土方さんが隣に立っていた。

「天宮は目を覚ましたか?」

土方さんは柱に寄りかかると懐から煙管を取り出した。

「それ、控えてたんじゃないですか?」

「……銜(クワ)えるだけだよ」

火が点いていない煙管を銜えて、何がいいんだろうね。

煙管の鉄の味がするだけだと思うのに。

「それで天宮は?」

「目は、覚ましました」

「じゃあさっそく部屋に呼んで審議に」

「それはもう少し待ってあげてください」

土方さんは眉をひそめて僕を見た。

「なぜだ?」

「それは……すみません」

「謝られても意味が分からねえよ」

泣いてる天宮さんに接吻してさらに泣かせたなんて、言える訳がない。

黙っている間、土方さんはそれ以上、無理に聞いてくるようなことはしなかった。

「土方さん」

「んだよ」

「しれば迷ひしなければ迷はぬ恋の道って句書いてましたよね」

「てめえ、また俺の発句集を盗んだな!」

僕が土方さんの句集を盗むなんて、試衛館時代からずっとじゃないですか。

「しかも暗記しやがって!忘れろ!今すぐここで忘れろ!」

「僕の頭そんなに器用じゃないんで無理です。

それに土方さんは、しれば迷ひしなければ迷はぬ恋の道って句だけ囲んでたじゃないですか。

あれは読む人に覚えて欲しいから強調してたんじゃないんですか?」