「その時、天宮の周りには死体が転がってたんだろ。それをおまえと斎藤に見られたんだ。

誤魔化せねと思ったから手紙を俺達に渡した。……そうなると、総司たちが言っていた、天宮のもう一つの人格、蒼夜叉も天宮の演技だったのかもな。

人を殺し慣れてるのを知られない為に、別の人格があると言った。その後の状態も全部演技だったなら相当な女だ。俺もすっかり騙されたな」

そう言って土方さんは笑っていたけど、その表情はどこか悲しそうに見えた。

土方さんだって本当な天宮さんが間者だって思いたくないんだ。

でも、鬼の副長として信じきることができない。

だから僕が何を言っても土方さんは聞く耳をもたない。

くそっ、土方さんってどうしてこうも頭が固いんだ。まだ辛うじて二十代のくせに頭は頑固おやじみたいだ。

「土方副長」

僕が拳を握りしめていると隣に座っていた一君が言った。

「なんだ斎藤」

「おそらく蒼夜叉は別人格と考えて良いでしょう」

土方さんの片眉がピクリと動く。

「あの時の天宮は自分のことを僕と言っていました。そして俺のことを一君と呼びました。口調もいつもの落ち着いた感じではなく、人を小馬鹿にするような陽気なもので……まるで総司のような感じでした」

ちょっと一君、僕に例えるのはやめてよ。

それに僕は人を小馬鹿にするような口調なんかしてないよ。