その気持ちはここにいる全員が同じらしく、苦笑いする人や怪訝な顔をする人たちがいる。

あれを微塵の戸惑いもなく平助が誇らしげに言ったものだから、僕は笑い飛ばすこともできなかった。

「あれ、どうかしやしたか?いきなり黙っちまいやしたけど」

「あ……、いや。気にしないでくれ」

土方さんがゴホンと咳払いをすると、空気が少しだけ戻った。

「山崎も来たことだし、本題に入ろうと思う。今日、天宮を拐った男についてだ。

俺が言った男の特徴を覚えてるよな」

「土佐弁を話す男でしたよね。そして特徴的な格好をしていたと」

「ああ、それでその特徴から男の正体を山崎達監察方に調べさせた。

それでそいつが誰か分かったんだよな、山崎」

「一日で分かったの?」

「そうやで。そいつ結構有名な奴やったからな」

一日足らずで男の正体が分かったなんてすごいな。

山崎君って怪我人を唾つけて帰すような医者だけど、監察方の仕事はきちんとするんだね。

「それで、そいつは何者なんだ」

「おそらく坂本龍馬って奴や」

山崎君の口から出た名前に、部屋の空気が張り詰めたものに変わった。